週末の夕方、かすかに聞こえた太鼓の音が気になって自宅の外に出てみると、いつになく人通りが多い。最近引っ越して来たばかりで土地勘がないので、何気なく人の後を付いて行く。
と、最寄り駅の隣の中学校の校庭で、近くの団地の盆踊りと、バザーと、花火大会がてんこもりになったような、夏祭りをやっていた。
静かな住宅地らしからぬ人、人、人…。まるで昭和にタイムスリップしたみたいな賑わいである。
校庭の200mトラックを囲むように、屋台もたくさん。大人たちは、花火を待っているのか、早くもシートで陣取り合戦。大きな子どもたちは、じゃれ合いながら、食べ物の屋台に行列。小さな子どもは我先に、キラキラ光る物(何だろう?)を空に飛ばしている。
子どもたちが手にしている空飛ぶ発光物は、最初、車のCMで見た、生き物のように飛び回るドローン(小型無人機)の群れのようにも見え、次に、アジア各国で爆発的に売れていると聞く、LEDライト搭載の、ゴムで打ち上げるおもちゃのようにも見えたが、う〜む、何かが違う。
近づいてよく見ると、昔からあるおなじみの形。紐の先を手で引き、軸を回転させて羽を飛ばすヘリコプターにボタン電池が付いただけの、光る玩具だった。
だが、夕焼け空を乱反射するような光を放って飛行する姿は未来的で、その不思議な感じに、思わず見とれてしまう。
懐かしくて新しい物に、人は引かれる。ザハ・ハディド・デザインの国立競技場を選んだ人も、これと同じ感覚を刺激されたのかもしれない。
夏の一夜、過去と未来を乗せた、せつなく美しい虹色の光が、わたしたちの頭上を飛び回っていた。
=2015年8月4日掲載=