フランスでは先月から、「食品廃棄禁止法」という耳慣れない法律が実施されている。
これによって、スーパーは、賞味期限が近づいた食品を捨てる事ができなくなった。
今まで年間約710万㌧もあった、食べられるのに捨てられていた食品が激減するというのが、当局の読みだという。
かたや、年間、同じくらいの「食品ロス」を抱えている日本は、どうよ?
そんな事を考えながら、仕事の合間に上野を歩いていると、松坂屋の壁面に「もったいないセール」という横断幕が出ている。
もしかしたらコレが、アレ?と、ピンと来たわたしは、そそくさと館内へ。友人から、松坂屋が時々「食品ロス」対策セールをしていると、聞いていたからである。賞味期限目前とか、箱が破けたとか、お歳暮やお中元の売れ残りとかが、半額以下で買えるという。
30分ほど並んで中に入ると、普段は手の届かない高級品が、何と激安。賞味期限も、今日明日というほどの短かさではないので、贈答用のコーヒー豆や、お尻がへこんだカニ缶などに、イソイソと手を伸ばす。
とその時、会場に「テレビカメラ入りまーす!」というアナウンスが響いた。
次の瞬間、隣にいたハイソな奥様がスーッとどこかへ。いつの間にか、そばにいた金縁眼鏡の紳士も、品定めしていた缶詰を放り出して姿を消した。気がつくと、フロアの真ん中は、もぬけのから。そういうわたしも、とっさに180度方向転換。カメラの射程から逃れる事に成功し、ほっと一息。
そうか。皆同じように、百均ならいざ知らず、デパートで見切り品を漁っている姿を人目にさらすのは、恥ずかしいのだ。
「食品ロス」を減らすには、そんなわたしたちの「見栄っぱりな意識」を減らせるかどうかが、鍵のようである。
=2016年3月15日掲載=