「君の名は。」というアニメ映画がヒットしている。
話題の「シン・ゴジラ」を抑えて、興行収入も100億円の大台に乗ったという。
だがわたしは、ちょっと白けて、眺めていた。
予告編を見ると、ストーリーは、男女の高校生の中身が入れ替わる、80年代の名作「転校生」に似ている。その上、タイトルは、往年のラジオドラマのパクリじゃないか。パクリとパクチーが大嫌いなわたしは、またまた、皆が「未熟」と「新鮮」を取り違えて、騒いでいるだけじゃないの? と、うんざりしていた。
ある日、打合せ中に、映画の話になった。思うところがあったので、「最近、皆、コピペに頼り過ぎ。オリンピックのエンブレム騒動が、いい例よ。耳触りのいい、昔のタイトルを引っぱり出してきて、パクるなんて、嘆かわしい……」と、思いをぶちまけた。そうそうと、うなずく、仕事仲間たち。
だが、26才のMちゃんは違った。「わたし、明日見にいく予定なのに。つまらない映画なんですか?」と、喰らい付いてきた。そしてこう続けたのである。
「日本には、本歌取りという伝統があります。「風立ちぬ」というアニメもそうでしたけど、テーマが被るなら、あえて、昔のタイトルをつけるという手法はアリだと思います」
本歌取り?そう来たか。「風立ちぬ」?いや、見ていない。
ふーん。Mちゃんに、一本取られたかも!
その翌日、わたしは一人、映画館のシートに座っていた。見てもいない映画に悪態をつく自分が、急に恥ずかしくなったのだ。
カップルやオタクの間で身を縮めるようにしながら、さあ、どんな悪口を言おうかと舌舐めずりしながら、「君の名は。」を楽しんだ。
=2016年10月4日掲載=