久しぶりに車の掃除をしていたら、トランクの奥の方に、見覚えのあるエコバッグが押し込まれていた。
ズルズルと引っ張り出して中を見ると、何と硬貨がザックザクである!
1円玉ばかりではなく、100円や500円玉も結構入っている。
ああ、そうか。少し前まで、わたしは財布が重くなると、小銭を自分の部屋の箱の中に放り込んでいた。その箱が一杯になった時、エコバッグに移して、車のトランクに載せたのだ。スーパーの買い物にでも、使ってやろうと思って。
だが、ちょうどその頃、世の中にキャッシュレスの波が押し寄せて来た。わたしも、ほぼカードで買い物をするようになって、小銭を使う機会がなくなった。
そのため、このバッグの存在自体をケロッと忘れてしまったのである。まるで、隠したドングリの場所を忘れてしまうリスのように。
だが困ったことに、買い物で小銭を使うには、今は実にタイミングが悪い。
消費税引上げ後の国の施策で、現金以外の支払いを勧めるキャンペーンが、今まさに進行中。街角のスーパーやコンビニの前には「キャッシュレス払いなら、ポイント還元!」と書かれたのぼりが、ヒラヒラと旗めいている。
頭をかかえながら、はたと気がついた。小銭といえば、募金じゃないかしら? ガラスびんに詰まった小銭を、大切そうに胸に抱いた子どもたちの姿が目に浮かぶ。
そこで、先週焼失してしまった沖縄の首里城再建の募金の方法を調べてみた。ところが数分後、ふるさと納税のサイトであっという間に募金が済んでしまった。やったことといえば、クレジットカード番号を入力しただけ。なるほど。今は募金だってキャッシュレスなのだ。
うむむ。突然現れた、時代遅れの宝の山。セコいようだが、1円残らず有効に使い切るために、しばらく悩むことになりそうである。
=2019年11月8日掲載=