毎年、真夏と年末の2回。東京ビッグサイトで「コミケ」と呼ばれるサブカルの祭典が開かれる。その存在をわたしが知ったのは、10年ほど前。「電車男」というアキバ系青年が主人公のドラマだった。彼は、憧れの女性エルメスとのデートを断り、「コミケ」参加を選ぶのだ。
へぇ、そんなに引きの強いイベントがあるのか~と気に掛けながらも、きっかけのないまま日々が過ぎて…。
そんなわたしにも昨年末、仕事半分とはいえ、とうとう参戦の日がやって来た。
初心者が行くなら2日目の午後ですよ、という助言を受けて、年末30日の午後、国際展示場正門駅に立つ。すると、会場から押し出されてくる人々の「圧」が凄い。たじろぎながら、コスプレエリアへ向かう。
と、そこには「ドラゴンボール」のセルや「刀剣乱舞」の刀剣男士など、コスプレイヤーたちが大集合。ジブリのキャラが何十人も勢揃いした一角もある。
撮影前には「1枚撮らせていただいていいでしょうか?」と尋ね、撮り終えたら丁寧にお礼をいうのが、ここでのルールみたい。
その後、流れにのって、手作り品のサークルやゲーム関連企業のブースを1周する。門外漢がごめんねと、少しヘコヘコしながら…。
半日が終わり、新交通「ゆりかもめ」の駅に向かって歩き出すと、過去の記憶が脳裏を巡り始めた。
あの頃のドラマの中でも「電車男」は特に面白かったなぁ。ヒロイン=エルメスを演じたのは、そうそう、福島県出身の美人女優、伊東美咲さん! わたしも出身地を聞かれるたび、「伊東美咲と同じ福島です」なんて答えて、受けを狙ったっけ…。
キラキラしいサブカルの聖地を離れた途端、思考回路はいきなり「ゆく年、来る年」モードに突入である。
「電車男」ならぬ、遅れて来た「ゆりかもめ女」は、車窓からしんみりと、晦日の夜景を眺めたのだった。
=2018年1月12日掲載=