今年の春、「クラブハウス」という、音声を使ったSNSが爆発的にヒットした。
今までの「ツイッター」や「インスタグラム」などのように文字や写真を打ち込むのではなく、皆がアプリ上のトークルームに出かけて行って、実際に声を出して好きな話題に参加する。
時事問題、農家の部屋、医療のことなど、話すテーマは種々さまざま。リモートワークをしながら参加するのにちょうどよかったのか、一気に注目を集めた。
だが、大流行していたのは短期間。鎮静化するのも早かった。今春のブーム的な存在感は今はもうない。
とはいえ、常に目を酷使している現代人に「まだ耳が空いているよ〜!」と教えてくれた事件だったと思っている。
そういえば、この頃、電車の中でイヤホンを耳に挿して、目を閉じている人が多い。皆、無意識のうちに、視覚を休ませようとしたがっているのかもしれない。
耳系アプリのなかで、わたしがハマっているのは、プロのナレーターが本を朗読してくれる「オーディオブック」。子ども時代の読み聞かせにも通じる、声が紡ぐ言葉のリズムにほっとする。
でも、こうやってホイホイ耳を使っていると、せっかく戻って来た「耳の空き時間」も、あっというまに埋まってしまうのではないかと心配になる。
さて、そんな先週の帰り道、近所の公園の中を歩いていると、あの懐かしい甘い香りが漂ってきた。キンモクセイである。思わず足が止まり、においのもとを探してキョロキョロ。
そう。新しい技術は日進月歩。遠からず、嗅覚に訴えるアプリが誕生するんじゃないかしらん? 次に狙われているのは、鼻かもしれない。
=2021年9月24日掲載=