持ち前の貧乏性が、ムクッと目覚める時がある。
わたしの場合は、化粧品の試供品。街角で配っているのを見ると、素通りすることができない。喜々として、手を伸ばしてしまう。
そのうえ、もらったからといって、すぐに使うわけでもない。洗面台の引き出しの中の箱に放りこんで、はい、おしまい。「しめしめ。いつか特別な時に使おう!」と考えている。
でも、いざとなると、大事な旅行や出張に、見ず知らずの試供品をわざわざ持参するはずもない。使い慣れた化粧品をトラベル用ボトルに移し替えていくのが、いつものパターン。結局、試供品の出番は、なし!
さて、そんなみみっちい性癖がアダとなって、3月の末、洗面台の引き出しが開かなくなってしまった。とうとう容量オーバーか。総ざらいしてみると、引っ越し以来の4年間に貯まったパウチの数は、ゆうに300個超え。どひゃ〜!
一念発起したわたしは、試供品の撲(ぼく)滅運動を始めることにした。洗顔、化粧水、美容液、乳液、クリーム…と、種類別に仕分けをし、メーカーも裏面も気にせずに、朝晩、機械的に使っていくことに…。
そうやって一週間程、やみくもに消費していると、不思議なことが起きた。肌の調子がモチモチになってきたのである。もらいものなのに、信じられない。
ここからは想像だが、自分で買った化粧品だと、どうしてもケチって少なめに使う。だが、試供品のパウチには適正な分量が入っている。これが、思わぬモチモチ肌を生んだ真相のような気がしている。
どうやら、お薬同様、化粧品にとっても、「適量」こそが、最重要ポイントだったようである。
日々、減っていくパウチの数。余分な贅(ぜい)肉がみるみる落ちていくような晴れ晴れした気分で、今日も使い切りに励んでいる。
=2019年5月24日掲載=