新潟に、10年ほど前からお付き合いしている食品会社がある。
先日の出張時、新潟市内で社員の皆さんと食事をしていると、菊の花びらの甘酢漬けが出てきた。わたしが不思議そうな顔をしたのだろう。新潟では菊を一年中食べるという話をきっかけに、ケンミンショー的な話題に花が咲いた。
その時ふいに、忘れていた一つの情景が、よみがえってきた。
遠い昔の須賀川三小。教室の黒板に、「東北七県」という四文字が書かれている。担任の先生が、今までは「東北六県」だったが、これからは新潟も入れて「東北七県」と考えてくださいと、話している。
当時からやや妄想癖があったわたしは、雪が深いことを理由に、関東甲信越の各県から仲間はずれにされている新潟県をイメージ。うちらの仲間に入れてあげよう!と胸に誓ったものである。
郷土料理の竹の子に手を伸ばしながら、興が乗ったわたしはつい、その思い出話を始めていた。東北と新潟の友情を確認し合って一同盛り上がる。そのような展開を、期待しながら…。
だが、それは甘かった。全員がぽかーんとした顔で口にしたのは「何それ?」
妙な空気が一座を包む。え?これって、東北の一方的な片思い?新潟に言わせれば、知らない話?
仕方なく、テレテレと話をつなぎながら、あの日の先生にはどんな意図があったのだろうかと考えた。
それにしても「何それ?」には、気の抜けた破壊力がある。他人と自分の間をそして自分と自分の記憶の間を吹き抜ける、生暖かいすきま風…。
ところで、福島民報をお読みの皆さんは「東北七県」という言葉に、思い当たる節はありませんか。
それともやっぱり「何それ?」なのかな〜。
=2014年6月3日掲載=