先日、テレビのニュースを見ていると、この秋に走り始めるJR山手線の新型電車が紹介されていた。
シャープな外観、車いすやベビーカーに配慮したシートなど、時代を反映した未来型電車のようである。
と突然、ニュースを読むアナウンサーが、この車両では、紙の広告はなくなりますと、サラリと付け足す。えっ本当?と驚きながら、こんなふうに、これから先、従来の広告媒体がぽつぽつ消えていくのかしら?と、広告屋さんとしては悲しい気持ちになる。不特定多数の人の目に留まりやすい紙広告、特に中づり広告は、好きな仕事の一つだったのだ。
さて、そんなJR車内の紙の広告、現時点の車両では。まだまだ健在。先日乗り合わせた電車でも、福島各地の写真が花盛り。ふくしまデスティネーションと銘打ったキャンペーンがただいま展開中で、大内宿や相馬野馬追、デコ屋敷等の福島情報が咲き誇っていた。
うれしくなって広告の真下に行き、携帯で写真を撮っていると、何この人?という感じで皆がこちらを見る。恥ずかしいが、この行動が少しでも宣伝になればそれでいいや、と考えた。
そういえば、この春は、「◯◯駅は福島を応援します!」と書かれた、駅員さん手作りのポスターも、各駅で見掛けた。下手くそな文字が、キャンペーンに温かな血を通わせている。
緑の5月。首都圏を巡る電車は、美しい福島を乗せて走っている。JRの手先ではないが、さあ、あなたも、福島へ行ってみなんしょ!と、しかめ面した乗客一人ひとりの背中を押したい。冬と夏の間にはさまれた、故郷の5月の柔らかな風と光を、わたしは知っているから。
=2015年5月5日掲載=