東京スカイツリーの予約が始まった。こういう時、われ先に!とあせってしまうのが、バブル世代というもの。
中世ヨーロッパで高い大聖堂が建設されたのは、天上の神に近づきたい!という祈りからだという。では、二十一世紀の「巨木」は、何に近づこうというのか。できれば、この目で、足で、皮膚感覚で確かめたい。
だが一方で、あわてて登らなくてもいいでしょう?と、はやる心に水を差す声がする。
最近、新宿のオペラシティや晴海のトリトンスクエアなど、三十階、四十階以上の高層フロアで打ち合わせをしていると、いま地震が来たらイヤだなぁ、と考えてしまう瞬間があるのだ。そんな時、うっすら手に汗までかいていて、われながら驚いてしまう。
この気持ちは、耐震性への心配などではなく、本能的な警戒心ではないかと思う。大きな揺れを一度知ってしまった感覚は、知らなかった昔には戻れないということか。
登りたいけど、登りたくない。体験したいけど、したくない。矛盾する感情に置いてきぼりをくった気分で、ちゅうちょする自分。あの日以来、こういうことがよくある。
=2012年4月5日掲載=