お気づきのことと思うが、わたしは面目ないほどのおっちょこちょいである。
おっちょこちょいの語源は、「おっ!」と驚き+「ちょこちょこ」動き回り+「ちょい」と軽率に行動する、の3つが合わさったものだといわれている。
わたしの場合まさにそれ。
いつも落ち着きなくアレコレ考えているので、目の前のことがおろそかになる。
だから、忘れものは日常茶飯事だし、電車の乗り間違いも、仕事の誤字も多い(ヤバい!)。 その時の気分で食器戸棚に食器をしまうので、いつも置く場所が違っていると、家族からはブーイングの嵐である。
先週も、日比谷から大手町に行こうとして逆向きの千代田線に乗ってしまい、スマホから顔を上げたら終点の代々木上原!という事態に直面した。
情けなさと同時に、ふと昭和の時代に聞いたタクシーの運転手さんの話を思い出した。それはこんな内容だった。
東京駅で外国人のお客を乗せたら、「ヒロヒトホテル!」と叫んだ。「ヒロヒト?ああ、ヒルトンね!」と機転を効かせて昔ヒルトンホテルだった赤坂の東急ホテルへ。到着するとお客さんは首を振り「ヒルトン、ノー。行きたいのは、エンペラーホテルだ」
そこでようやく、ヒロヒトホテルとは帝国ホテルのことだと気づいた運転手さん。「お堀端の桜が満開で、赤坂からの回り道がむしろ喜ばれましてね」と、楽しげに話してくれた。
いまでも、帝国ホテルの前を通るたび、「ヒロヒトホテル…」とつぶやくわたし。
そう。いつだっておっちょこちょいな人間の頭の中は、そんな些細なエピソードがダダ漏れ状態なのである。だからこそ、肝心なことが上の空になってしまうのだろうが。
=2023年3月24日掲載=