先日、都内のお花屋さんをのぞくと、啓翁桜(ケイオウザクラ)、水仙、スイトピー、アネモネ、ゴールデンクラッカー、そして色とりどりのチューリップが咲き誇っていた。近づいて匂いをかいでいるだけで、胸の中の春が大きくふくらんだ。この時期の花屋さんほど、春がフライングしている場所はないようだ。
チューリップといえば、わたしには以前から気になっている謎がある。それはなぜ、子どもはチューリップの絵ばかり描くのだろう?ということである。幼稚園や保育園の壁は、チューリップが描かれた画用紙でいっぱいになっていたイメージがあるのだけれど、今も同じだろうか。
先日、幼稚園で働いている友人と話す機会があったので尋ねてみると、今でも子どもが描くお花の9割以上がチューリップだという。
「いいところに気がついたね」と、友人は笑い出した。
「チューリップって、便利なんだな。名札にちょうどいい形なのよ」うん、たしかにチューリップの形をした名札の記憶がある。
「それに、折り方が簡単なの。年少の子でも、チューリップなら楽々折れる」ははーん。
「そうそう。これが一番かな。歌の影響!」 咲いた咲いたの歌?
「そう。元気よくあの歌を歌ってから、さあ、絵を描きましょう! ってなるから、子どもたちは自然にチューリップの絵を描いちゃうって寸法」へ、そうゆうこと?
友人はあっけらかんと笑った。現場の声によるあっけない幕切れ……。長年の謎は、いとも簡単に答え合わせされてしまった。
今年も、チューリップの季節が、雪の中から身をもたげはじめている。
でもね、園児たちよ、きれいなお花はチューリップだけではありませんぞ!
=2022年2月25日掲載=