自宅の近くを朝ランしていると、ゴミ置き場に小型の電子辞書が捨ててあった。あれ? これにはレアメタル、使われてないんだっけ? と、最近よく聞く「都市鉱山」という言葉がふわっと心をよぎる。
暗い坑道をトロッコで運ばれて「天然鉱山」まで採掘に行かなくても、中古の家電がすでに「都市鉱山」。
身の回りから希少金属を取り出して再資源化するというアイデアは、実にクレバーだと思う。
それにしても「都市鉱山」とはよく言ったものよね。最初に聞いた時には、何のこっちゃ? と思ったけれど、10年足らずの間にすっかり定着。東京オリンピック・パラリンピック大会のメダルなんて全部、使い古しの携帯電話や小型カメラやパソコンなど、「都市鉱山」の金属だけで作られるというではないの?
そんなことを考えながら、住宅地の坂道を下っていくと、たわわに付いた実を、カラスにつつかれるままにしている夏みかんの木が目に留まる。
気になりだすと、同じようなユズや金柑の木が、次々に目に飛び込んでくる。どの家の住人も、収穫することなんて、考えてもいない様子。
もし、1件ずつ許可を得て実をもいだら、すごい量になるな。それをコトコト煮つめたら、マーマレードがどっさりつくれるだろう。とすると、こちらは「都市果樹園」って感じ?
待てよ。金属→果実と来たら、次は人ではないの?
暗算の得意なおじさん、お赤飯上手なおばあさん……。住宅地に眠っている才能や特技も、都市の鉱脈に違いない。
鉱石は磨いてなんぼ、使ってなんぼ。掘り起こさずに見過ごすなんて、そんなの大損ではないの?
何だかんだと、朝ランで動かすのは、手足だけではない。どかどかランナーの勝手な妄想もまた、グルグル回りつづけるのである。
=2019年12月13日掲載=