思い込みはおもしろい。長い間、東京駅に行くときはJR、大手町なら地下鉄と決めつけ、使い分けてきた。
どっちからでも行けるんじゃない?と気づいたのは、五年ほど前のこと。
東京駅と大手町の中間にあたる丸の内エリアに新しく、丸ビル、新丸ビル、オアゾなどのビルが林立し、仕事や会食に利用するようになった。それで、隣り合うマップが、心の中でつながった。
そうはいっても、東京駅はずっと駅舎の工事中。丸の内に行こうとして、迷路のような歩行者通路を、右往左往したことも数知れず…。
だが先週、大手町での仕事から東京駅まで歩いていると、赤レンガの駅舎がこつ然と姿を現した。工事用外壁を片づけている作業員さえいるではないか。
永遠につづくかに見えた工事が、すわ!終盤戦のようである。
そうか。アメリカの空襲で焼失した駅舎を、応急的な八角屋根から、元の姿に戻す工事をしていたのかと、いまさらながら納得する。
美しいものが一度破壊され、苦労のすえ復元されたとき、深みを増した美しさが出現することがある。多くの人の旧復への思いがこもるからだろう。
この駅は、ふくしまへの玄関口でもある。
破壊、復旧、再生を経て、さらに深みを増した美しさをたたえる、ふくしまへ!
たくさんの人の、たくさんの思いを乗せた旅も、ここから始まる。
=2012年9月20日掲載=