先日、弾丸取材があって、2泊3日で海外に行った。
夜遅く帰国し、成田空港の地下駅のホームから、特急電車に乗り込もうとしていた。と、スーツケースをころがした初老の夫婦が、「この電車、成田に止まりますか」と聞いてきた。
えーと。ここが「空港第二ビル駅」。前の駅が「成田空港駅」で、次が「成田駅」だっけ? ほんと、この辺りの駅って、ややこしいんだから……と、瞬間、心の中で、ボヤきを入れる。
半分自信はなかったが、発車ベルも鳴っているので「さすがに、止まるんじゃないでしょうか」と答えると、夫婦も大慌てで同じ電車に乗り込んできた。
すぐにスマホで確認すると、8分後に成田駅に到着するようである。「よかった。次が成田ですね」と、話し掛けると、奥さんの方が、つんとソッポを向いた。ご主人が「ありがとうございます。おい、わざわざ調べてくれたんだよ」というが、「だってこの人、『さすがに』っていうんだもの」と、ギロリと睨んできた。
え?「さすがに」が、何かマズかったの?
「さすがに」という言葉は辞書的にいえば「やっぱり」や「いくらなんでも」に近い意味の副詞である。
わたしのニュアンスは、「いくらなんでも成田ほどの大きな駅に、特急が停まらないことはなさそうですね」という意味だった。
だが、ご夫婦の奥さんは、「こんな簡単なことを、いくらなんでも知らん人などおりまへんがな」的な、小ばかにされたニュアンスを、感じたみたい。あ〜ぁ、1000パーセント、そんなつもりはなかったのに……。
自分の言葉遣いが未熟だったのだろうが、優しく出迎えてくれるはずの母国語=日本語から、帰りしなに、いきなりバシッとビンタを張られた気分……。
この手荒な歓迎に、能天気なわたしも「さすがに」少し、凹んでしまった。
=2018年9月28日掲載=