エンタメの世界は、ファンとスターの関係性でなり立っている。誰がいいはじめたのか、最近では、熱烈に応援する相手のことを「推し(おし)」と呼ぶようになった。
「推し」のジャンルは幅広く、アイドル、アニメのキャラクター、ユーチューバー、声優、お笑い、スケート選手、将棋の棋士など多種多様。要は、全力で応援していこう!と思わせるエンターテイナーなら、どんと来いってわけである。
さて、わたしの「推し」はご存知、ご当地キャラのふなっしーである。好きになったきっかけは、地元の船橋市の公認がもらえずに、市役所や商工会議所をたらい回しにされても、めげずに梨のPR活動をするけなげな姿。
人気者になってから、全国の被災地に積極的に出掛けていく活動にも心を打たれた。事実、ふなっしーは、福島県にも何度かやって来て、落ち込むみんなを元気づけている。
「推し」がいると何がいいのか。その答えは第1に、生活にリズムが生まれること。ツイッターを定期的にのぞくなど、ぼーっとしてはいられないのである。
第2に、知らなかった世界が広がること。例えば、なぜか今、ふなっしーは日本刀にハマっている。ゆるキャラと刀、違和感だらけの組み合わせだが、刀に関する発信が増えたことでファンも猛勉強。わたしはまだまだ追いつけないが、刀剣博物館に出かけて熱心に学ぶようなファンがただいま大量発生中である。
コロナ禍で、リアルなイベントの回数は減ってしまったが、どんなに辛い時でも、ネットで「推し」の姿を見ると、口元がちょっとだけゆるむ。ささやかな幸せってやつである。
=2022年3月11日掲載=