「カワイイって英語だっけ?」表参道の人混みを歩いていると、後ろから声がして、思わず耳に全神経を集中させた。
すると、「めっちゃ似合う!」「プリティ!」と、おたがいのファッションを褒めたたえ合う女子二人の会話がクリアに聞こえてきた。
おっちょこ探偵のわたしは、わざとゆっくり歩いて、後ろから彼女たちを観察することにした。
予想と違って地味めのファッション。今年流行りのフレアスカートを履いてミニポシェットを肩に掛けた、ごくごく普通のハイティーンだ。
このコたちにとって、カワイイは英語? とっさに慌ててしまったが、あながちズレてるわけでもないのかな。オックスフォード英語辞典にだって、sake、sukiyakiなどと一緒に、kawaii、emoji、karaokeなどが載っているというご時世なんだし……。
だとしたら、わたしの反応こそが時代遅れ? カワイイはもはや、逆輸入ワードなのかしら……。
ウダウダ考えているうちに、二人の姿は視界から消えた。だがついつい、心の中ですがりつく。忘れないで! カワイイはれっきとした日本語だってことを。
そこで思い出した。あのくらいの年の頃、心の狭いわたしは、カワイイという言葉を忌み嫌っていた。
いちばん敬遠したのは、女性が赤ちゃんや子犬を見て「カ〜ワイイ〜」と叫ぶシチュエーション。そこには「カワイイと感じるわたしって、カワイイでしょう?」というメッセージが隠されているように思えた。つまり、カワイイ=あざとい自己アピールだと決めつけていたのである。
実は今でも時々、カワイイには何か裏があるような気がすることがある。kawaii文化に傾倒する海外の人たちは、どこまで気づいているんだろう。
=2024年10月11日掲載=