少し前、いろんなメディアで「マルハラ」が話題になった。
「マル」とは、文章の語尾に打つ「。」のこと。
「ハラ」とは、パワハラとか、セクハラと同じ「ハラスメント=嫌がらせ」。
要約すると、LINEなどのチャットで、文章の語尾に「。」がついていると、若者世代は、威圧感を感じてしまうという話。
「遅刻します」というメッセージに、上司から「わかりました。」なんてマル付きの文章が返ってきた日には、怖い! とビビッてしまう。ところが、もし、語尾が「わかりました」や「わかりました!」なら、あまり怖くはないという。
X(旧ツイッター)などでは、反論として、「正しい日本語はマルで終わるのが当たり前」とか「なぜ、大人世代が若者世代の顔色を伺わなければならないのか?」とか「LINEは、漫画みたいな吹き出しで文章が表示されるから、漫画と同じく「。」は使わない方が自然」など、多くの意見が飛び交った。
その後、ハラスメントと呼ぶのは大げさでは? ほっとけ! ……そんな流れに決着しつつあるようだ。
この議論、わたしも人ごとではない。実は、広告の現場でも同じ悩みがあるのだ。たとえば昨年担当した、日やけどめクリームのインターネット広告。「水に濡れても落ちにくい」というコピーの後ろに「。」をつけるか、つけないか。小一時間、PCの前で迷ってしまった。5年前は「。」を付けるのが当たり前だった。だが昨今、付けない広告の比率が、年々上がっている実感がある。
思うに、「。」を付けるか付けないかの選択は、きっぱりけじめをつけて主張するのが好きか、嫌いか? の問題なのだろう。つまり、「わたしはこう思う。」と、「わたしはこう思う、知らんけど……」の違い。
わたしたちは、きっちり語尾と曖昧語尾の真ん中でゆらゆら揺れる、ちょっと弱気なヤジロベエなのである。マル。
=2024年3月22日掲載=