嫌いではないが、あまり音楽業界に詳しくない。だから時々、特有の言葉使いに、ドギマギしてしまう。
例えば「トリビュート・アルバム」なんて言葉を聞くと、え、トリビュートってなに? 賛辞? 貢ぎ物? カバーアルバムとは違うの? てな感じで、頭の中はグッチャグチャ。
それは「AフィーチャリングB」などという楽曲でも、同じこと。うーむ、どっちのミュージシャンが主役で、どっちがゲスト? Aさん? それともBさん? ……なんて考え込んでしまう。
さて先日、新しい製品のウェブサイト制作の仕事で、音楽用語的オリエンがあった。
「これが競合相手のサイトです。こちらをオマージュして作成してください」と、Zoom画面の中のクライアントはニッコリ。送られてきたURLは、ライバル会社のサイトだった。その話には続きがなく、「それじゃ、よろしく!」って感じでビシッと終了。
うーむ、オマージュって尊敬よね。敬意を持って真似せよってことかしら。
こんな時、若い頃なら、「他社のサイトをパクれってことですか? こちらの製品の独自性はどこにあるんですか!」なんて突っかかったかもしれないが、この数年、丸くなったわたし。
むしろ挑戦心が湧いてきて、「こちらを参考に、全く違うサイトを作り上げて見せましょう」という心持ちになった。
コンビを組んだデザイナーの力もあって、サイトは、元ネタとは似ても似つかぬものに出来上がった。喜んでいただけたのだが、ちょっとわだかまるオリエンだった。
昭和の広告屋は、「人と同じものだけは作るな!」と叩き込まれた。その記憶が、わたしの心の奥で細々と自己主張をしつづける。
礼儀正しく先人をフィーチャーし、オマージュしながら、トリビュートするのが、コピペ時代のマイウエイ?
ますますもって頭の中は、ハチの巣をつついたような騒ぎである。
=2024年11月8日掲載=